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第8回JDA春期ディベート大会に出場して

村上彰慶(TEAMエラ星人,静岡大学理学部数学科3年)

web掲載: 2002.5.1


[目次]
1 大変だった大会の準備
2 予想外の1試合
3 論題充当性を議論した第2試合
4 第3試合と決勝進出
5 緊張してしまった決勝戦
6 最後に


1 大変だった大会の準備

2月の上旬,試験勉強をしていた頃に論題が発表されました。「日本政府は,日本国籍の取得条件を大幅に緩和すべきである。」とても難しそうで,こんな論題でディベートができるかと,とても不安になったのを覚えています。

実際準備を始めてみると,本当に難しかったので困りました。何より論題に関連する資料はたくさんあったのですが,論題そのものに関する資料は少なく,立論や反駁の準備は非常に困難を極めました。

 僕は静岡,パートナーの市野は名古屋に住んでいます。そこは大学生の日本語ディベート不毛の地。そのため一緒に準備をしたり練習試合をしたりする仲間がいません。だから僕達が勝つためには,他のチームよりリサーチをしっかりすることで,不足する部分を補うしかないので,この資料の少なさは非常に困りました。

 その結果,立論作りは苦難の連続でした。最低限の立証ができたものをつくるのに非常に時間がかかりました。特に否定側はしっかりしたデメリットを作ることができませんでした。もちろん,こんなことではだめで,「資料があるときに立論が書けるのはあたりまえ,資料がないときに立論が書けるのが真のディベーターだ。」という言葉を聞いたことがあります。真のディベーターへの道はまだまだ遠いことを感じる日々でした。

そうやって準備している間に,あっという間に大会当日になってしまいました。夜行バスで会場に向かい,午前7時には会場に到着してしまいました。市野は夜行バスで眠れなかったようで,会場のベンチで眠ってしまいました。遠征は大変です。

2 予想外の1試合

 予選1試合目は僕達が否定側で,相手は「キリストの受難チーム」でした。肯定側は「利益と不利益の大きさでこの試合は決めるべきではない。時代に合わなくなっている日本国籍の取得条件に関する法律を変えることが大切だ。」と立論で主張してきました。ディベート甲子園出身の私達が経験したことのない種類の議論で非常に驚きました。ほとんどのディベートの試合では肯定側のプランを導入すること生じるメリットとデメリットの大きさを比較して勝敗を決することの多い中で,自分達でその既存の枠を壊すという非常にレベルの高いことに挑戦するチャレンジ精神には頭が下がりました。

 当然このような肯定側の立論を予想していなかった我々は,立論の原稿がないので非常に焦りました。そのため僕の担当した否定側第1立論はひどく,燦々たるものになってしまいました。しかし,否定側第2立論でパートナーが的確な反駁をしてくれたので何とか勝つことができました。

 これからは,今まで以上にさまざまな論点に対して準備するとともに,想定していない議論に対しても適確に対処できるように勉強しなければならないと感じました。またディベートには,いつも行われている既存の枠を越えた価値基準を示すことでジャッジを説得することができれば,いつもとは違ったディベートができる可能性があることを感じることができました。

3 論題充当性を議論した第3試合

 予選2試合目は僕達が肯定側で,相手は「創価大学Debate Network Cチーム」でした。否定側は僕達が肯定側第1立論で出したプランに対し,国語辞典などを用いながら言葉の定義を確認し,分かりやすく丁寧に,論題に充当していないということを中心に主張してきました。

 その中で特におもしろかったのが,法律の条文を用いて,国籍取得条件の定義をして「国籍取得条件はこれだけだ。」と主張してきたところです。敵ながら,おもしろい議論で危うく納得しそうでした。ディベート甲子園では,論題充当性について議論することはほとんど無いので,このような議論をあまり経験したことの無い僕達は非常に焦りました。準備時間中に相方の市野とじっくり相談して対策を練り反駁したことで,プランが論題に充当しているとジャッジに納得していただけたので,何とか勝つことができました。

 今回の論題では,否定側は肯定側のプランによっては非常にデメリットが発生しにくいので,勝つための一つの方法として論題充当性の議論を勉強しようと思いました。また,逆にいえば相手も否定側のときに論題充当性の議論を出してくることがあるので,肯定側で戦うときのことも考えて,論題充当性の議論に対しての反論を考えておく必要があるとも感じました。

4 第3試合と決勝進出

 昼食休憩のあと,予選3試合目は僕達が否定側で再び「創価大学Debate Network Cチーム」と,肯定側と否定側を逆にした形で戦いました。

 肯定側は第1立論で,在日朝鮮人が日本国籍取得の際に受けている人権侵害にスポットを当てた議論を展開してきました。普通は日本国籍がないことで受けている人権侵害(参政権など)にスポットを当ててくると思っていたので,非常にびっくりしました。たまたま少しだけ使えそうな資料を持っていたので,何とか対処し,からくも勝つことができました。

 そんなわけで予選の3試合とも,僕達があまり想定していなかった議論を相手からさてしまいました。今回はたまたま勝つことができましたが,これでは安定して勝つことはできない気がします。実際これまで大学生になってから出場した大会では,あまり良い成績を修めることはできませんでした。これからはもっと様々な角度から論題を分析して,どのような議論が相手からされてもできるだけ大丈夫なようにしていきたいと思います。そして自分達の準備だけで大会に出場するのではなく,大会前に他のチームと練習試合をして実戦経験をつみ,完璧な準備状態で大会に参加したいと思いました。ただ,実際には非常に難しいでしょうが……。

 今回の大会ではA部門のみで26チームの出場ということで,予選で3勝全勝してもポイントが少なくて決勝には出られないと思っていました。ところが,結果を発表されてびっくりしました。なんと予選を1位で通過してしまったからです。東京までやってきたご褒美をいただけたようでした。

5 緊張してしまった決勝戦

 相手は「慶応義塾高校ESS Aチーム」で,抽選の結果僕達が否定側になりました。肯定側は無国籍児の救済をすべきだと肯定側第1立論で主張してきました。これは,僕達が想定していた議論の中で最もデメリットが発生しにくく,否定側としては非常に戦いづらいと考えていたものでした。さらに相手も決勝に残っただけのことはあって高校生とは思えない高い実力をもっていました。そのため試合は非常に厳しいものになり,結果としては完敗でした。

 ただ負けたことよりくやしいのが,試合の内容が非常に納得のいかないものになってしまったことです。僕達は母国語である日本語でディベートをしているので,ディベートをあまり知らない人がみても「なんか早口で,小難しいことを言っているけど,いま日本ではこんな問題があるのか。勉強になったなぁ。」と,何か感じ取ってもらえるようなディベートをするように心がけています。また,ディベート甲子園の優勝を目指す中学生・高校生のディベーターが理解できるディベートをして,「こんな試合がしたいなぁ。こんなディベーターになりたいなぁ。」と思ってもらえるような試合をしようとも心がけています。

 予選では,まだまだ実力不足でこのようなディベートにはまだまだ至らないのですが,自分たちがある程度満足できる試合をすることができました。しかし決勝では,大舞台での試合ということもあってか非常に緊張してしまい,僕達が目指しているところから程遠いディベートをしてしまいました。自分の実力不足を痛感しました。今後は今まで以上に精進して,自分の理想により近づけるようにがんばっていきたいと思います。

 大会に出るといつも本当に勉強になります。特にJDAの大会では,主に日本語でディベートをしている人だけでなく,主に英語でディベートをしている人たちとも試合をすることができます。社会人の方々とも試合をすることができます。そういう様々なディベーターと接することで,より多くの刺激を受け,いつもの大会とは違ったことを学ぶことができます。

 さらに今回の大会に参加してよかったことに,同じ静岡市に住むディベーターと知り合えたことがあります。そんな出会いがあることも大会のよいところだと思います。そんなすばらしいJDA大会が,これからも末永く続いていくことを願っています。

6 最後に

 最後に,大会では緊張して言えなかったサンクス・ワードをここに述べさせていただいて,この文章を終わらせていただきます。

 プリンターが壊れため困っていた僕達に快く準備の場所を提供してくださった笠井さん,試合の相手をしてくださったディベーターの皆さん,試合を判定してくださったジャッジの皆さん,そんな出会いの場を作ってくださった大会運営の皆さん,こんな駄文を載せてくださったNAFA出版の皆さん,ディベートをしている僕を暖かく見守ってくれている両親と妹,そして僕をパートナーとしていつも一緒に大会に出てくれる市野。感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。

 

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