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第8回JDA春期ディベート大会出場記

庄司 佳晃

初出: 2002.5.8


[目次]
1 はじめに
2 大会に参加したきっかけ
3 試合の準備(プレパ)について
4 アーギュメント作成にあたっての苦労点
 4.1 日本語ディベートである点
 4.2 大学ディベートである点
 4.3 その他
5 大会の感想


1 はじめに

 今回,第8回春期ディベート大会に参加させて頂き,その結果として,この様な形で文章を書かせて頂くことになりました。この文章を読んで頂ける方々にとって少しでも役に立てればと思いつつ,内容に入っていきたいと思います。

2 大会に参加したきっかけ

 小黒さんのおかげ。この一言に尽きると思います。

 我が慶応義塾高等学校ESSは毎年,1月にNEW YEAR'S DEBATING MATCH なるものを開催しています。私は主催者でもなく直接参加でもなく,1人のヘルパーとして参加していました。その試合のジャッジは,慶応が主催ということで,やはりある程度の交流を持たせて頂いているKDSの方々に来て頂くことが多くなります。今年の大会には小黒さんや黒岩さんに来て頂き,大会を無事運営することができました。

 私がある対戦の進行役(chairperson)をやっていた時に,ジャッジの小黒さんと交わした会話です。

小黒さん:今度何か大会あるんだけど,出てみない?
私   :竹内(今回のパートナー)がでるんならいいっすよ。
小黒さん:じゃああとで話してみるか。
そしてすべての試合終了後に3人で交わした会話です。
私   :小黒さんが大学ディベ出てみないかって。
竹内  :じゃあ出てみるか。
小黒さん:じゃあ決定ね。

 このように1日の内にディベート大会の存在を知り,参加を決めた訳です。良く言えば,好奇心から,悪く言えばノリからということになると思います。

3 試合の準備(プレパ)について

 大会に向けての準備ですが,高校生の私たちは進級がかかっていたので,論題発表後の期末試験までは1度も会うこともなく,それどころか10日頃まで私は論題もしりませんでした。私の記憶ですと,大体14日頃から始めた,と記憶しています。

 プレパは1,2回図書館に行った以外は,家も近かったのでしばらくは地元で行い,切羽詰まってからは学校のコンピューター教室で行っていました。

4 アーギュメント作成にあたっての苦労点

 具体的なことはパートナーの竹内君が執筆してくれているものと期待して,ここでは全体的な話をしたいと思います。

 まず,私が今まで参加してきたディベートとの大きな相違点は2つありました。

(1) 日本語ディベートである点
(2) 大学ディベートである点

 ここで(1)に関してですが,我々慶応義塾高等学校は,慶応義塾女子高等学校とともに,全国高等学校英語会連盟(UNION)に所属しています。そこで行われているのは,形は今回の大会とほぼ同じですが,準備時間(Preparation time)が各チーム25分,反対尋問(Cross-examination)はその時間内に行われる英語ディベートですので,言語の差というのはやはり大きなもので,ただ今までやってきたのを日本語でやれば良いかと言うとそうではありませんでした。また,(2)に関しては,相手が高校生だったのが大学生に変ると,やはりそこでもディベートのやりかたが変った,といえます。この2つの点を中心に,話しを膨らませていけば,今回の苦労点・工夫点に触れられると思います。

4.1 日本語ディベートである点

 まず第一点目ですが,ここにおいて「日本語ディベート」というものは,ただ単に言語が日本語であるディベートというものを指している訳ではない,という点に留意して頂きたいです。すなわち,日本語ディベートとは,日本語でディベートをすることによって生まれる様々な効果の総称としてこの語句を用いていきたい,ということです。

 ではそれは何に帰着するかというと,「分かりやすいアーギュメントを」ということです。余りに当然のことですが,私としては,改めてその重要さに気付く大事な機会をこの大会で得られたと考えています。

 英語では,冷静に,常識的に考えれば有り得ないアーギュメントが出される機会が多くありました。もちろん,これは高校レベルの話ですが。例えば戦争などはその代表例だと思います。どの論題でも,頑張れば戦争は起こせます。そして特に英語ディベートの場合,語学力が試合を大きく左右することが考えられます。特に,その効果は後のスピーチになればなるほど大きくなると思います。つまりリバータルスピーチでは語学能力が絶対条件となります。

 即ち,英語ディベートだと語学力でアーギュメントの荒さをカバーできてしまい,それに相手が十分な反論ができないケースが多くなってしまうことがあると思います。くどいようですが,勿論高校レベルというか私のレベルまでの話ですが。

 それが日本語になるとその踏み台がなくなります。また,すべてのディベーターとジャッジが同じ土俵の上に置かれるわけです。

 母国語である日本語を使ったディベートを考えてみますと,以下の特徴が挙げられるのではないでしょうか。

(1) 言語的に,日本語に縛られる。
(2) 文化的に,日本語に縛られる。

 ここで(1)は即ち日本人である試合に参加している人全ては,日本語文法の知識を持っており,各々の人が普段用いている形態の文法以外の形で話されると,それは理解し難い,ということです。また(2)は,すべての人が日本型の思想を持っており,それに反するアーギュメントは理解しがたい,ということです。つまり,余りに形式的な記号を付けたりすると,受け入れにくいものになるし,また,我々の常識の範囲を超えているアーギュメントは受け入れにくいということです。当然ですね。しかしそれは英語の形を取ると,意外と隠れてしまうものなのです。

 分かりやすいアーギュメントは,それを出すだけでジャッジとしては「なるほど」とお思いになると思うのです。エビデンスを読む前にその印象を与えることは,非常に重要なことです。分かりやすくするだけで説得力がますのですから。そして相手にもアーギュメントをしっかり分かってもらった方が,楽しい試合ができると思います。

4.2 大学ディベートである点

 第二番目の大学ディベートになっての変化は,反対尋問の大切さを学んだ点が大きいと思います。ディベートとはジャッジを納得させるゲームであるわけですから,相手チームと,またジャッジと上手くコミュニケーションを取っていくことが,かみ合った試合を行っていく上で大事だと思いました。

4.3 その他

 余りに当然なことしか書く事ができなくて申し訳ないですが,大会のたびに基本に戻って,そこから分かりやすくすることも必要かなと思います。分かりやすい,かみ合った試合ができれば,負けても悔いはないだろうと思いますし,実際今回はそのようにして試合に望んだつもりです。ゲームなのですから勝ちたい,でも,楽しく戦いたいと思いました。

 あと一つ付け加えると,アーギュメント作りは,ただただ根拠と主張をしっかり考えることだと思いました。当然ですね。でもより深い根拠を用意することが何よりも勝因に繋がることは確かだと考えます。例えば今回のキーアーギュメントとなった「アイデンティティ」の問題です。肯定側としてはカウンタープランを警戒する限り,否定側としてはDAとして必ず出てくるものだと考えました。ということはこの問題で上回れれば勝利が一歩近づきます。そこで,インパクトの説明などは相手がしてくれれば良いわけで,問題は主張の大きさより根拠の深さだと考えました。つまり,相手のアーギュメントをなるべく認めていき,そのさらに奥の根拠を説明するなりカードを読むなりして,一気に反転させることを,肯定側・否定側両方で考えました。今はもう,我々が考えたものより良いものが出てきているだろうと考えますから,ここで紹介するには及ばないと思います。

5 大会の感想

 素直に勝てて嬉しかったです。というか,決勝に立てて,良い試合をできたことが嬉しかったです。

 JDAのみなさん,特に小黒さん,徳永さん,黒岩さん,ありがとうございました。貴重な体験を。そして支えてくれた塾高・女子高ESSのみんな。先生方。会場のみなさんは,私たちの試合を最後まで見てくれました。ありがとうございます。

 そしてパートナーの竹内。おそらく人生最後のディベートを君と組めて良かったと思います。サンキュ。

 そしてこれを長々と呼んで下さった方々も,ありがとうございます。

 最後に,我々が所属している全国高等学校英語会連盟は加盟校を増やし,より活発にディベート,ドラマ,スピーチなどの英語での活動を行いたいと考えていますので,宜しくお願いします。詳しくはホームページの方へ。


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