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JNDT出場記

合田光広(東京大学ESS 2年チーフ)
花木健太郎(東京大学ESS OB)

初出:2002.7.1




今回印象深い試合として真っ先に浮かんだのは,IS(一橋大学International Society)との対戦です。UT(東京大学。University of Tokyo)2チームで今大会合計3回もあたっただけでなく,今期はそもそもUTとISの対戦は仕組まれたかのように毎度のことになっています。この原稿を執筆中にTIDLの予選が終わり,何とKUEL,JNDT,TIDLと,三大会連続で準々決勝ではUT対ISなのです。また,個人的にはさらに前から井上さん(一橋大学)とは大事な場面で戦ってきました。そんなわけで,ISとの対戦は内容が濃いだけでなく,思い入れ的にも深いものがあるわけです。

さて,今大会3つのUT対IS戦のうち,皆さんに紹介したいのは予選第六戦,私がいたUT(A)の試合です。この試合はUT対IS戦にふさわしい,白熱した試合になったと思います。

肯定側UTのケースは,出生地主義と二重国籍を認めるという,今大会もっとも大きなアクションです。DA(デメリット)を恐れずむしろそれを積極的に解決していこうといくストラテジー(戦略)は割合ジャッジからも好評だったようです。具体的なADとしては,(1) 日本人の差別的意識が消えるというものと,(2) 不法就労者の劣悪な労働条件が改善されるというものを提示しました。

一方否定側は,(1)トピカリティ,(2) 労働市場において在来日本人と競合が起き,不満から暴動というDA,(3) 社会的負担の増大,資本の海外移転による産業の空洞化といった反転(turn around)に加え,(4) 差別意識は消えない,そしてオランダにおいても排外主義的な運動が高まっているというケースアタックを出してきました。

DA(労働市場における外国人と日本人の競合)はAD1(日本人の差別意識の解消)によって解決するというのが肯定側の基本的ストラテジーなのですが,実はここで困ったことが起きました。そもそも,ケースには解決性(Solvency)が3つあって,ひとつめは単純にたくさん来るから慣れるというもの。ふたつめは二重国籍によって国籍の壁がなくなるというもの。そして3つめが,次の世代,そのまた次の世代になれば,生まれたときからさまざまな外見の人がいて,差別意識も消えるだろうというものでした。しかし,ここで2つめと3つめの解決性はオランダの事例に頼っていたのに,そのオランダで差別意識が消えてないというのです。これはいままで受けたことのない反論で,まさに決定的(crucial)。さすがによくリサーチしてくるなあ,と思った瞬間でした。

 試合ではAD2が伸びず,勝負はAD1(日本人の差別意識の解消)とDA(労働市場における外国人と日本人の競合)の決着に委ねられることになりました。ここではすでにAFFの劣勢が明らかだったのですが,最後にがんばって3つめの解決性を伸ばし,「生まれたときから日本人っぽい外国人,外国人っぽい日本人がたくさんいたら,誰が生来の日本人で,誰が新たに帰化した日本人なのか区別がつかない。ということは仮に差別的意識があったとしても,差別する対象,危害を加えるべき対象が特定できないはずだ。」と主張して,将来の解決性を残しました。

 結局これが認められて,どうにか勝ち残ることができましたが,同じケース(肯定側の議論)を使いつづけることの怖さとよさを同時に味わえた試合でした。というのも,確かに同じケースを使いつづければ,それに対してばっちり対策をされるという怖さはありますが,それに対してなんとかケースを使ってさばくということもよく使い込んだケースだからこそ可能になるのだと思います。

今期は比較的同じケースがシーズン最後まで使いつづけられることが多い気がしましたが,そういう場合でも,入念なリサーチ次第ではおおいにディベーターのスキルアップにつながる可能性があるのではないかと思います。なんだかんだいっても,やはりディベートは準備(プレパレーション)がなければ始まらない,そんなことを思った大会でした。

(ごうだ みつひろ)
(はなき けんたろう)

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