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クローン問題に関するウェブサイトの紹介

飯田浩隆(JDA理事・NAFA顧問理事)
初出:2002.9.12



[目次]
1 はじめに
2 論題の基礎知識
3 政府の取り組み
4 クローン人間の作成
5 クローン技術の研究
6 クローン技術と生命倫理上の問題
7 宗教団体・宗教学の立場からの意見
8 証拠として用いる際の注意点
9 おわりに

1 はじめに

 2002年後期における日本ディベート協会(JDA)推薦論題は,「日本国政府は,人クローン胚の作成および人体への応用に関する規制を大幅に緩和すべきである。」です。これを受けて,全日本英語討論協会(NAFA)では,"Resolved: That the Japanese government should relax its restrictions on the creation and use of human embryo clones for medical purposes."という論題を作成しています。

 クローン技術に関する問題が注目されたのは近年のことであり,書籍や雑誌に掲載されている情報は必ずしも多くないので,インターネットに掲載されている情報は,ディベートのためのリサーチをする上で役に立つものが多いと思われます。本稿では,クローン技術に関するウェブサイトのうち,ディベートを行う上で参考になるものを紹介します。

2 論題の基礎知識

 論題のリサーチをするには,まず論題に関する基礎知識を得ることが必要です。次のふたつのウェブサイトは,クローン技術問題をわかりやすく解説しています。

○ 科学技術庁「クローンって何?」(掲載日記載なし)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/shisaku/kuroun.htm#06

○ 講談社ウェブサイト「人体改造の世紀2001年度版」第3部 クローンと不老不死編(2000年)
http://kodansha.cplaza.ne.jp/hot/genome/

3 政府の取り組み

 肯定側であれ,否定側であれ,まずはクローン技術規制の現状がどうなっているのかを確認することが必要です。現在,日本では「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」(クローン技術規制法)が制定,施行されています。文部科学省のウェブサイトでは,法律の内容や制定の背景を説明しています。

○ 文部科学省「生命倫理・安全に対する取組」(掲載日記載なし)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/seimei/main.htm
* 下記のウェブページへリンクしています。

○ 文部科学省「最近の生命倫理問題について」(PDFファイル/ 平成14年7月)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/seimei/2001/seimeirinri/seimeirinri.pdf
クローン技術規制法の成立の経緯,概要

○ 文部科学省研究振興局「『ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律』及び『特定胚の取扱いに関する指針』について」(平成13年12月5日)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/seimei/2001/hai3/011201.htm
クローン技術規制法の条文,解説,科学技術会議生命倫理委員会における検討等

4 クローン人間の作成

 クローン技術を不妊治療に用いて,クローン人間を作成することは是か非か。ケンタッキー大学のザボス教授は,不妊治療の手段としてクローン技術を用いることを認めるべきである旨を米国議会の小委員会で証言しています。

○ Panayiotis Zavos, Prof. Emeritus of Reproductive Physiology & Andrology Univ. of Kentucky "Testimony before the House Subcommittee on Criminal Justice, Drug Policy, and Human Resources" (PDFファイル/ 2002.5.15)
http://www.reproductivecloning.net/zavos.pdf
* Human Cloning Foundation <http://www.humancloning.org/>よりリンク

 これに対し,米国大統領生命倫理諮問委員会による報告書では,生命倫理学的見地から,クローン人間の作成は認めるべきではないとしています(下記報告書の,Executive Summary,Chapter Five: The Ethics of Cloning-to-Produce-Childrenを参照)。

○ The President's Council on Bioethics "Human Cloning and Human Dignity: An Ethical Inquiry" (2002.7)
http://www.bioethics.gov/cloningreport/

 日本では,社団法人日本不妊学会は,クローン人間の産生は不妊症の治療法とは認められない旨等の見解を発表しています。

○ 社団法人日本不妊学会「クローン人間の産生に関する日本不妊学会の見解」(2001.03.30)
http://www.jsfs.or.jp/funin/guideline/saishin.html#20010330
* 社団法人日本不妊学会ウェブサイト <http://www.jsfs.or.jp/jsfs.html>よりリンク

5 クローン技術の研究

 クローン技術の研究は許されるでしょうか。英国保健省(Department of Health)諮問委員会による報告書では,制約条件を設けつつ,クローニング研究を支持する立場を表明しています。

○ CMO's Expert Group on Therapeutic Cloning - " Stem Cells: Medical Progress with Responsibility" (2000.8.17)
http://www.doh.gov.uk/cegc/stemcellreport.htm

 既に紹介した米国大統領生命倫理諮問委員会による報告書でも,基本的にはクローニング研究を支持する立場を表明しているものの,積極派と慎重派の間で見解が分かれているようです。(下記報告書の,Executive Summary,Chapter Six: The Ethics of Cloning-for-Biomedical-Research を参照)。

○ The President's Council on Bioethics "Human Cloning and Human Dignity: An Ethical Inquiry" (2002.7)
http://www.bioethics.gov/cloningreport/

 これに対し,クローン技術の研究は生命倫理上問題があるとして,反対する意見も有力です。生命倫理上の問題については,次に紹介します。

6 クローン技術と生命倫理上の問題

 生命倫理上の理由により,クローン技術に反対する意見は数多くあります。帯広畜産大学の後藤助教授は,クローン人間の作成は人間の尊厳に反すると主張しています。

○ 後藤 健(帯広畜産大学畜産環境科学科生態系保護学講座助教授)「人間の尊厳とクローン人間」(1997.6.29)
http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms/clone/Voice_HumanCloning.html
<http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms/clone/clone00.html>よりリンク

 これに対し,京都大学の加藤名誉教授は,クローン技術を全面的に規制する根拠は生命倫理上見出せないとの立場を取ります。加藤名誉教授は,クローン技術問題に関する論考を数多く発表しています。

○ 加藤尚武(京都大学文学部名誉教授)「加藤尚武のホームページ」
http://www.ethics.bun.kyoto-u.ac.jp/kato/index.html
* 下記のホームページにリンクしています。その他にも論考あり。

○ 加藤尚武「クローン技術と倫理」(1997.5.12)
http://www.ethics.bun.kyoto-u.ac.jp/kato/clone.html

○ 加藤尚武「クローン人間の倫理(続編)」(1997.7.26)
http://www.ethics.bun.kyoto-u.ac.jp/kato/clone2.html

○ 加藤尚武「クローン人間と医療行為の正当性」(1998.5.27)
http://www.ethics.bun.kyoto-u.ac.jp/kato/clone5.html

7 宗教団体・宗教学の立場からの意見

 宗教法人大本は,クローン技術に反対する立場から,数多くの声明・要望書等をインターネット上で公開しています。

○ 宗教法人大本「生命倫理問題への取り組み」
http://www.oomoto.or.jp/Japanese/jpBiet/bietmain.html
下記のウェブページ等へリンク。他にもヒト胚・ES細胞研究に関するページあり

○ 宗教法人大本「『ヒトES細胞研究解禁』に対する反対声明」(平成13年8月1日)
http://www.oomoto.or.jp/Japanese/jpOpin/010801esst.html

○ 宗教法人大本「『人クローン胚作製の全面禁止』に関する要望書提出」(平成14年4月8日)
http://www.oomoto.or.jp/Japanese/jpOpin/020408klon.html

 また,東京大学文学部の島薗教授は,宗教学の立場からクローン技術をめぐる論争をわかりやすく紹介しています。同じウェブサイトには,ES細胞は生命の萌芽ではないという京都大学再生医科学研究所の中辻教授の意見と,それに対する島薗教授の見解も掲載しています。

○ 受精卵は人か否か Life Sience Information Net
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/main.html
 下記のウェブページ等へリンク

○ 島薗進(東京大学文学部宗教学宗教史学科教授)「島薗進の宗教学の立場から」(掲載日記載なし。2002.8.28.更新)
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/simazono.html

○ 中辻憲夫(京都大学再生医科学研究所教授)「─ ES細胞は特殊な細胞。だが生命の萌芽ではない ─」(2001.11.27)
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/news011127.html

○ 島薗進(東京大学文学部宗教学宗教史学科教授)「『いのち』 と『「モノ』 の境界」(2001.12.4)
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/news011204.html

8 証拠として用いる際の注意点

 インターネット上の情報を証拠資料として用いるためには,証拠としての形式要件,及び情報の信頼性について注意する必要があります。

 一般に,証拠資料には作成者,肩書及び資料の作成年月日を記載することが必要とされ,その記載のない証拠資料は証拠能力がないものとされます。しかし,インターネット上に記載されている情報には,作成者や掲載日の記載がないものも多くあり,証拠資料として用いることができないものも少なくありません。本稿では,原則として,作成者,その肩書,掲載日が明らかなものを記載しましたが,証拠資料として用いる際は,自ら確認するようにして下さい。

 また,インターネットに掲載されている情報は,書籍・雑誌以上に玉石混合であり,信頼性の低い情報も数多くあります。ウェブページに記載されている内容を鵜呑みにすることなく,記載されている情報の根拠,情報源,内容の論理性,他の情報との整合性などをチェックし,信頼性の高い情報を用いるようにする必要があります。

9 おわりに

 かつては,ディベーターの情報収集手段は書籍,雑誌と新聞だけでしたが,インターネットの発展により,かつては入手することが困難であった政府の資料や外国の研究結果などが簡単に入手できるようになりました。ディベーターがアクセスできる情報の範囲は,一気に拡大したといえるでしょう。

 しかし,インターネットの情報を有効に使うためには,それなりのスキルが必要です。インターネットの情報を有効に用いるためには,膨大な情報の中から必要な情報を「検索」し,情報の価値を「評価」して「選別」する技術が必要です。例えば,Yahoo! Japan <http://www.yahoo.co.jp/>で「クローン胚」をキーワードに検索すると約2360件ものページがヒットします。このような情報の洪水の中から,ディベートに役立つウェブページを探し出すのは,容易なことではありません。また,検索して発見したウェブサイトの中から,筆者の所属,肩書,情報の内容,掲載日等を判断して有益な情報を探し出すためには,単なる検索エンジンの使い方にとどまらない総合的な情報検索技術がもとめられます。

 とはいえ,このような技術は,ディベート以外でも有用です。ディベートのリサーチをきっかけとして,インターネットの情報検索技術が向上するのであれば,それもディベートの効用のひとつと言えるかもしれません。

 今期の論題に関連するウェブサイトは数多くあります。本稿をきっかけとして,ディベーターの皆さんがさらにインターネット掲載情報のリサーチを深め,有意義なディベートをされることを期待しています。

(いいだひろたか)

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